全国 > コラム > グループホームは儲かるのか——公定価格のしくみと、2026年6月に下がった新規事業所の報酬
厚生労働省の令和5年障害福祉サービス等経営実態調査によると、共同生活援助(障害者グループホーム)の収支差率はサービスの型によって差がある。介護サービス包括型が9.1%であるのに対し、日中サービス支援型は3.8%、外部サービス利用型は1.1%である(令和4年度決算)。さらに国は令和8年度の報酬改定で、収支差率が高く事業所数の伸びが大きいサービスとして共同生活援助を挙げ、2026年6月1日以降に新規指定された事業所の基本報酬を、所定単位数の1000分の972に引き下げた。既存事業所の報酬は従前どおりである。
本稿で扱う共同生活援助(障害者グループホーム)は、高齢者向けのグループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは別の制度である。
共同生活援助の収入は、事業者が独自に価格を設定するものではなく、国が定める報酬基準によって決まる。厚生労働省の令和5年障害福祉サービス等経営実態調査(令和5年6〜7月実施、令和4年度決算が対象)は、この報酬基準のもとでの収支の実態を示す。
介護サービス包括型の収入の内訳をみると、自立支援費等・措置費・運営費収入が34,957千円(83.9%)を占め、利用料収入5,316千円(12.8%)、補助事業等収入361千円(0.9%)、その他367千円(0.9%)が続く。支出の内訳は給与費25,432千円(61.0%)が最も大きく、支出の6割が人件費にあたる。減価償却費1,758千円(4.2%)、委託費761千円(1.8%)、その他9,013千円(21.6%)が続く。1施設・事業所あたりの定員は15人、サービス換算職員数は5.9人である。
共同生活援助は介護サービス包括型・日中サービス支援型・外部サービス利用型の3類型に分かれ、収支差率は類型ごとに異なる。令和4年度決算の1施設・事業所当たりの収支は次のとおりである(単位:千円)。
| 類型 | 収入 | 支出 | 収支差 | 収支差率 | 客体数 | |---|---|---|---|---|---| | 介護サービス包括型 | 41,687 | 37,892 | 3,796 | 9.1% | 463 | | 日中サービス支援型 | 58,244 | 56,058 | 2,186 | 3.8% | 359 | | 外部サービス利用型 | 16,193 | 16,023 | 170 | 1.1% | 335 | | (参考)全サービス全体 | 33,914 | 32,126 | 1,788 | 5.3% | 9,147 |
収支差率は年度によって変動する。介護サービス包括型は令和元年度7.3%→令和2年度3.5%→令和3年度5.8%→令和4年度9.1%、日中サービス支援型は令和元年度11.5%→令和2年度6.5%→令和3年度6.9%→令和4年度3.8%、外部サービス利用型は令和3年度8.0%→令和4年度1.1%と推移した(令和2年度・令和3年度の数値は令和4年経営概況調査による)。
これらの数値は調査対象事業所の平均値であり、個々の事業所の収支を保証するものではない。
介護サービス包括型の基本報酬は、令和6年度の報酬改定(令和6年4月1日施行)で区分の立て方が変わった。改定前は世話人の配置基準に応じて配置4:1以上・5:1以上・6:1以上・体験利用の4区分に分かれていたが、改定後は配置6:1以上と体験利用の2区分に整理された。
これに代わって新設されたのが人員配置体制加算である。置くべき世話人・生活支援員に加え、利用者数を12で除した数以上、または30で除した数以上を配置する事業所に、障害支援区分に応じた加算が1日ごとに算定される。基本報酬の区分を絞り込み、手厚い人員配置は加算で評価する組み立てへと変わった。
国は令和8年度の報酬改定(令和8年2月18日・障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)で、「2(3)応急的な報酬単価の特例」を新たに設けた。対象は就労継続支援B型、共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)、児童発達支援、放課後等デイサービスの4サービスである。
改定資料は総費用の増加と人材確保の課題を背景に挙げ、「このため、サービスの質を担保しつつ、制度の持続可能性を確保する観点から、新規事業所に限り、臨時応急的な見直しを実施する。」と説明する。対象サービスは、「年間総費用額全体に占める割合が1%以上で、令和6年度の収支差率が5%以上あるサービスのうち、事業所の伸び率が過去3年間5%以上の伸びを続けているサービス」という基準で選ばれた。
共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)の応急的な単価は所定単位数の1000分の972、就労継続支援B型は1000分の984、児童発達支援は1000分の988であり、3サービスのうち共同生活援助の下げ幅が最も大きい。対象となるのは「令和8年6月1日以降に新規指定された事業所」(2026年6月1日以降)に限られ、既存事業所については従前どおりである。
重度障害者への支援体制を持つ事業所や、離島・中山間地域、自治体の公募・経済的支援を受けて設置された事業所は、従前の報酬単価が適用される。この特例は令和9年度報酬改定までの時限的な措置である。共同生活援助は2027年4月1日から総量規制の対象サービスにも加わることが決まっており、新規参入に関わる制度変化が、報酬と指定の両面で動いている。
現在公表されている詳細な収支差率は、令和5年調査による令和4年度決算の値であり、最新の年度を反映したものではない。令和7年度の活動状況を調べる厚生労働省の令和8年経営実態調査は、令和9年度の報酬改定に向けた基礎資料等として活用される(奈良県の周知ページによる)。開設地を探す際は、当サイトの市区町村ページで実数(15,000か所、1年で1,507か所が掲載され484か所が消えた、GHが1件もない359の市区町村)を確認できる。
本サイトの数字はすべて障害のある方向けのグループホーム(共同生活援助)です。高齢者向けのグループホーム(認知症対応型共同生活介護)は含みません。名前が同じでも別の制度です。
事業所の数と一覧=WAMNET 障害福祉サービス等情報公表システム オープンデータ(2026年3月末時点)/人口=総務省 住民基本台帳(令和7年1月1日現在)。詳しくは出典とデータについて。
「この1年の増減」=2025年3月末→2026年3月末の掲載数の差(開設・掲載開始・廃止を含む)。複数の町に住居を持つ事業所は代表の町で数えています。