全国 > コラム > 消えた484か所はどこへ——廃止・休止・指定取消・事業譲渡
当サイトの集計では、この1年で484か所が掲載から消えた。ただし掲載データからは消えた理由を区別できない。事業所が消える経路は複数ある。廃止・休止の届出、6年ごとの更新を受けないこと、行政処分による指定取消し、事業譲渡や合併による運営者交代である。国は、共同生活援助を含む事業所数が急増した類型について、運営指導の頻度を上げる方針を示している。
本稿で扱う共同生活援助(障害者グループホーム)は、高齢者向けのグループホーム(認知症対応型共同生活介護)とは別の制度である。
事業者が自らの意思で指定を手放す経路は、廃止・休止の届出と、更新を受けないことの2つである。障害者総合支援法第46条第2項は「…その廃止又は休止の日の一月前までに、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。」と定める。第46条第1項は「…休止した当該指定障害福祉サービスの事業を再開したときは、主務省令で定めるところにより、十日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。」と定めており、再開の届出は10日以内と、廃止・休止より期限が短い。
もう一つの経路が更新切れである。第41条第1項が定める6年ごとの更新を受けなければ、指定の効力そのものが失われる。能動的な届出を経ないまま、期限切れだけで指定が消えるケースである。
自主的な届出や更新切れとは別の経路が、行政処分による指定取消しである。第50条第1項の柱書は「都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該指定障害福祉サービス事業者に係る第二十九条第一項の指定を取り消し、又は期間を定めてその指定の全部若しくは一部の効力を停止することができる。」と定める。共同生活援助に関わる取消事由には、従業者の知識・技能や人員が条例の基準を満たせなくなったとき(第4号)、設備・運営の基準に従って適正な事業運営ができなくなったとき(第5号)のほか、「…請求に関し不正があったとき。」(第6号)、「…不正の手段により第二十九条第一項の指定を受けたとき。」(第9号)がある。
この規定が適用された例が、株式会社恵の事案である。厚生労働省は令和6年6月26日、株式会社恵について「…愛知県及び名古屋市において、同社の運営するグループホーム事業所(5事業所)の指定取消処分が行われました。」と公表している。理由は食材料費の過大徴収であり、厚生労働省は「…本社等による組織的な関与が認められることから、…いわゆる連座制を適用することとし、…通知しました。」としている。連座制の適用により、「…5年間、同社及び同社の役員等は、…新規の指定を受けることができないこととなります。(…もっとも早い日は令和6年8月31日である。)」という措置が取られた。厚生労働省は同日付で「…利用者に対する継続的なサービスの確保等について、行政指導したところです。」ともしている。
指定取消しや更新切れとは異なり、事業所自体は存続したまま運営者だけが交代する経路もある。事業譲渡・合併・分割である。国の制度は、この種の承継が起きることを前提に組み立てられている。
令和8年度報酬改定の「応急的な報酬単価の特例」(令和8年2月18日)は、「合併・分割・事業譲渡に伴う指定の場合、その前後で事業所が実質的に継続して運営されると認める場合は、既存事業所と同様の扱い」という原文を含む。厚生労働省・こども家庭庁の指定ガイドライン(令和8年6月)も、総量規制の対象外として扱う運用が望ましい例の一つに「事業継承等で実質的に支援体制に変更が無い新規指定の場合」を挙げている。
2つの原文が示すのは、国の制度が事業の譲渡・承継を前提にしているという事実である。当サイトの掲載データは、ある事業所が消えて別の事業所が現れたとき、廃止によるものか運営者交代によるものかを区別できない。承継の件数・市場規模の実測も当サイトに無い。
株式会社恵の事案を一つの背景として、国は運営指導・監査の頻度を引き上げる方針を打ち出した。厚生労働省とこども家庭庁の資料は、「障害福祉サービス等については、事業所数(特に営利法人が運営する事業所数)が急増している中、今般の株式会社恵の事案のように、…処分事例も発生している。」と背景を説明する。
運営指導の実施率は令和5年時点で全国平均16.5%(最高48.8%・最低1.0%)である。指針はおおむね3年に1回の実施を求めており、この頻度は実施率にして約33%にあたる。共同生活援助の実施率は18%、処分数は12件(うち営利法人8件)である。
見直しでは、「…特に営利法人が運営する事業所数が急増しているサービス類型については、3年に1回(実施率約33%)以上の頻度で行う。」とされ、対象は就労継続支援A型・B型、共同生活援助、児童発達支援、放課後等デイサービスの5類型である。新規の事業所も対象で、「…指定後間もない事業所については、指定後3年以内に運営指導を行う。」との方針も示された。
大規模法人への検査も見直される。2以上の都道府県にまたがる約920法人への検査は国が行うが、現在は年間30法人程度の実地検査にとどまる。見直し後は2年に1回程度・年間450法人程度の書面検査を導入し、100事業所以上の24法人は2年に1回の実地検査を行う。令和7年度中に監査マニュアルや処分基準の例も作成される。
484の内訳は当サイトのデータからは分からない。掲載ベースの集計であり、廃止・休止・統合・承継のいずれかを区別できないためである。1年間の県別増減では、減った県は山形県・長野県・山口県の各−1にとどまる。全国では1,507か所が新たに掲載され484か所が消え、純増は+1,023となった。開設地や入居先を探す際は、当サイトの市区町村ページで実数(15,000か所、GHが1件もない359の市区町村)を確認できる。
本サイトの数字はすべて障害のある方向けのグループホーム(共同生活援助)です。高齢者向けのグループホーム(認知症対応型共同生活介護)は含みません。名前が同じでも別の制度です。
事業所の数と一覧=WAMNET 障害福祉サービス等情報公表システム オープンデータ(2026年3月末時点)/人口=総務省 住民基本台帳(令和7年1月1日現在)。詳しくは出典とデータについて。
「この1年の増減」=2025年3月末→2026年3月末の掲載数の差(開設・掲載開始・廃止を含む)。複数の町に住居を持つ事業所は代表の町で数えています。